この話は私の身内から聞いた話です。
彼女は高校を卒業してすぐに東京の大学に上京したそうです。
実家の両親とはたまに電話で近況を報告はしていましたが、地元に帰るのは年に1度あるかないかの頻度でした。
結局大学卒業後も東京で就職し何年も長い間東京で生活をしていました。
そんな彼女が珍しく会社から長期休暇をもらったそうです。
普段なら友人と会う約束や、彼氏と出かける約束などを取り付けてたり、一人でも出のにしかし、なぜかこのとき彼女は「そうだ、しばらく実家に帰ってないから帰ろかな」何年も実家のことなど気にしたことがなかったのにふと帰ろうと思い立ったそうです。
行動派なところがある彼女は思い立ったが吉日とばかりに荷物をまとめて、飛行機で実家に帰ったそうです。
帰りがてらに両親には連絡を入れましたが、いきなりの事だったので彼女の部屋の掃除やおもてなしはできないと言われましたが、彼女は実家に帰るだけなので気にしなくていいと伝え、本人も特に気にしてはいませんでした。
必要であれば自分で掃除もできるので、わざわざ自分の帰りを待つ必要もないと両親には伝えたそうです。
そして、彼女が実家に着いたのは、もう夜が更けてからの事だったそうです。
時刻も遅く両親に迎えに来させるのも申し訳ないと思い、タクシーで実家に向かうことにしました。
彼女の地元は小さい田舎町なのでその町の住人はほとんど顔見知りに様な人が多かったそうです。
しかし、しばらく帰っていない彼女を知る人はいないだろうと思っていたのですが、なんと迎えに来たタクシーの運転手は自分の顔見知りの方だったそうです。
その懐かしい顔に思わず彼女が話しかけるとタクシーの運転手も「あぁ!良く帰って来たね」と彼女の事を覚えてくれていたそうです。
自分の実家の場所を伝えずとも運転手は当たり前のように実家に向かってくれました。
その車内での会話「時々戻ってきているでしょ?」と言われ「いえ、正直実家に帰るのもう何年も振りなんです」と伝えると運転手は不思議そうに小首をかしげます。
「時々部屋で誰かがいるから帰ってきているのかと思った」
そういわれ、両親との電話での会話が思い出されました。
時々母が掃除をしに部屋に入っているのを見間違っているのだとすぐに気づき「あぁ、母が時々部屋の掃除をしてくれているみたいで」そういうと運転手も納得したように「まめに掃除してもらえるのはありがたいね」と頷いていました。
というのも、彼女の実家は二階建てで自室は二階にあり見晴らしが良いのが気に入ってはいるのですが、それは外から見てもそうで、車道からカーテンをしなければ自室内が見えてしまう位置にありました。
母が時々部屋に入っているのを見間違えるのも無理ないとと彼女もその時、その会話を特に気にすることはありませんでした。
そして、気づけば実家に着いており、運転手に軽く礼をすると懐かしい実家のチャイムを押しました。
中からは少し老けてしまった母が出迎えてくれ、「おかえり」と変わらない笑顔で話しかけてくれました。
流石に一日の半分以上を移動時間に使ってしまったため、疲労を感じていました。すぐに寝てしまうのも両親に申し訳なく少しだけ話をしてお風呂に入ってから早めに就寝することにしました。
自室に入ると少し埃っぽく母の掃除できてないという言葉が思い起こされます。明日早く起きて自室くらい掃除でもしようかと思いながらその日は床についたそうです。
何年経っても自室の雰囲気ががらりと変わってしまうことはなく、懐かしいような不思議な気持ちになったそうです。
そしてそれは突然訪れました。
朝起きるために携帯でアラームを付けていましたがそのアラームよりも早く目が覚めてしまったそうです。
薄目を開けると部屋は明るく、カーテンから差し込む光からすごく天気がいいことが分かったそうです。
しかし、なんだか昨日眠った自室の雰囲気と明らかに違う何かを感じます。
違和感、その正体が何なのか彼女は直ぐに気づくことができませんでした。
何が変なんだろう、辺りを見渡そうと体を起こそうとすると急に金縛りに合いました。心霊体験など全く経験したことのなかった彼女はすさまじい恐怖感にかられたそうです。
丁度金縛りに合った瞬間横向きで寝るような体制で体が動かなくなりました。
周りの音が何も聞こえなくなりただ限られた視界から情報を集める他彼女ができることは何もありませんでした。
僅かに動く眼球だけで彼女は自室を見渡します。
部屋は明るく何か物が動いている気配もありません、恐怖でパニックになりそうになり、聞こえるのは自分の浅い息だけでした。
そして、彼女はその目前に違和感の正体をみつけました。
ベッドの端から耳と髪の毛が徐々に見えてくるのです。
誰かがベッドの下からものすごいゆっくりとしたスピードで上がってきているというのが分かったそうです。
それは自分が横向きなっている体制と同じように横向きのまま徐々に、徐々に上がってきます。
耳から少しずつ頬が見え、ゆっくりゆっくりと白い目が見えてきます。
彼女は声を出すこともできず、視線を外す事も出来ず、ただその光景を見つめる事しかできません。
あまりにも白いその肌と、眼球は自分を見つめる事はなく黒目は眼球が回転してしまうんじゃないかと思うくらいに横をにらみつけていたそうです。
白目は血管が血走っており粘膜まではっきり見えていました。
顔が全部見えてしまったらどうしようという恐怖にかられた彼女は何とか体を動かそうとしましたが、動く気配はありませんでした。
目前の得体のしれない人物の顔がちょうど半分まで見える位置まで上がってくると、小さな声でうめき声を上げ始めました。
横をにらみつけたままの眼球が小刻みに痙攣していました。
すると次の瞬間その人物を誰かが引っ張たかのようにその人物は短い悲鳴と共に一瞬でベッドの下へと引きずり込まれました。
同時に彼女は金縛りから解放され、弾かれたように自室を出ていきました。
両親はすでに起床しており、彼女の顔色を見るととても心配したそうです。
さっきあった出来事を両親にすべて話し、そしてようやくその恐怖から彼女はわんわんと泣きじゃ繰りました。
1日だけの滞在でしたが彼女はあまりの恐怖にその日のうちに東京に帰ってしまったとのことです。
後に分かったのは母が掃除に入っていたのは半年に1回程度であり、度々彼女の自室に入っていた記憶はないとの事。
また、両親がタクシーの運転手に確認した所、人影を見ていたのは一か月に2~3回ものペースだったそうです
彼女は一人っ子で他に兄弟が居る事もなく、両親以外に自室に入る人物はいません。
また、そのタクシーの運転手の話によると彼女が上京してすぐに人影を度々見かけていたとのことでした。
また近所の人にも訪ねてみたところその人影を見ている人は思ったより沢山いたそうです。
娘さんでしょ?と誰も疑う人がいなかったため、両親は「そうなんです」としか答えようがなかったそうです。
それから彼女が実家に戻ることは本当に少なくなってしまい、実家に帰ったとしても自室で過ごす事はないとのことです。
自分の部屋に居るのがだれなのか、何のために自分の部屋にいるのか、そしていつから自分の部屋に住み着いているのか、考えたくもないと言っていました。
また、最後にその得体のしれない人物をベッドの下からすごい力で引っ張ったもう一つの得体のしれない存在は一体何だったのでしょうか。
もうその話を彼女に聞くことはできませんが、御払いなどはしていないとのことだったので、きっとまだ部屋に住んでいるのでしょう。
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