これは私が幼少期に体験した実際の話です。
私は今でも幼少期の頃の記憶が鮮明にありまして、「あの頃はこんなことがあったな」と思い出して懐かしむことがよくあるのですが、それと同時に私が2、3歳の頃に体験してしまった恐ろしい体験も蘇ってしまうのです。
幼少期の頃は、今現在の持ち家の実家とは違うところの賃貸アパートで父、母、私の3人で暮らしておりました。
まだ幼稚園にも通っていなかったため毎日家の周りを探検をしたり、母親が経営している美容室の周りで虫を捕まえたり花を摘んだりと、自分なりにとても充実した幼少期を過ごしておりました。
しかしながら、そんな自ら充実していたと言えるくらいの生活を送れていたのにもかかわらず、どうしても絶え難い時間があったのです。
それはみんなが寝静まった夜中なのでした。
私は寝つきも早く、あまり手のかからない子供で父も母も同じように寝つきが早く、しかも朝まで起きないくらいに深い眠りにつくことのできる家族でした。
しかしある日の深夜、寝つくことはできたのですがどうしても途中途中で起きてしまっていました。
「こんな日もあるんだな」と思いながらも父や母の寝顔を見て安心してまた眠りにつくというような時間を過ごしていたのですが、それでも何度も何度も起きてしまうのです。
さすがに寝ては起きてを繰り返していると子供の私でも疲れてしまい、上半身だけ身体を起こして眠くなるまで少しボーッとしていようかなと思った途端に金縛りに合いました。
幼いながらも金縛りに合ったことなんて初めてでしたしかなりの衝撃を味わったことを覚えています。
手も、足も、身体全体が全く動かない拷問のような状態に苦しんでいると、目だけが開けられることに気付きました。
しかし何故かとても怖い感覚に陥り、ここで目を開けたらいけないという気持ちが生まれたのですが近くでうめき声のような「オオオオオ」という男の人の声が聞こえてきた気がしたのです。
恐る恐る目を開けてみると、天井の隅にモヤモヤとした黒いものがあることがわかりました。
私は当時、まだ幽霊やおばけといったもの自体知りませんでしたし、なおさら「得体の知れないものを見てしまった」という恐怖と「あれは何なんだろう」というワクワク感からジーッとその黒いモヤモヤを見てしまっていました。
どのくらいの時が経ったのかわかりませんが、かなり長いことジーッとその物体を見てしまっていたために疲れてしまい、私はいつのまにか眠りについてしまっていたようです。
しかしその後、いきなりどこかに引きずり込まれるような感覚になり、口の中いっぱいに固いごはんのようなトゲがあるボコボコしたような物体を入れられているような感覚になりました。
私は驚いて目を覚まし、そのボコボコした物体を口の中から外に吐き出しました。
するとまた天井の隅のほうから「オオオオオ」という男の人の唸り声のようなものが聞こえてきて、そちらの方を向いてみました。
するととても怖い状況に陥ったのです。
なんとそこには鬼のお面のような怒りに満ちた顔と、その周りを囲むように伸びている髪の毛がモヤモヤと動いていたのです。
恐ろしさに声も出ませんでした。
私はおばけや幽霊などを知らなかったのですが、これは見てはいけない、みてしまったらどこかに連れて行かれるかもしれないという気持ちになり、すぐに布団に潜って父の手を握りしめました。
そのあとはどうなったかわかりませんが、いつのまにかまた寝てしまったようで気付いたら朝になっていました。
朝や昼間にその寝ている部屋で怖い顔をみることは全くなかったのですが、深夜にみんなが寝静まったあとにパッと目が覚めてしまいその怖い顔を見る経験と口の中にボコボコした固いごはんのようなものを入れられている感覚になる体験は、毎日ではなかったもののおよそ2ヶ月間くらいは続きました。
私自身には何も悪い影響なんてなかったですし、朝や昼間にはそんなことがあったなんて忘れてしまいいつも通りに充実した日々を過ごしていたのですが、私以外の誰かに話しても誰にも共感をしてもらえなかった体験なのです。
幼少期の話なのにもかかわらずここまで鮮明に覚えているなんて、いわずもがな今までの人生の中でトップクラスの体験だったことは言うまでもない話なのですが、子供は大人に比べるとそのような不思議な体験をしやすいということを聞いたことがありますし、もしかしたら父や母といった大人の人たちには見えてなかったというのはそれが原因か、もしくは人さらいのような妖怪で、私は狙われた存在だったのかもしれません。
その怖い顔やボコボコしたものが口に入ってくる感覚はパッとなくなったので良かったのですが、今でもあれがなんだったのか全く想像も予想もすることもができませんし、霊媒師やその類の方などに調べてもらいたいとも思っておりません。
ただ、あの体験から20数年間が経った今現在、突然あのことが気になったので今の持ち家の実家に帰った時に母親に尋ねてみました。
「俺が小さかった時によく体験してたって言った天井の隅に顔が見えてたことって覚えてる?」と直接的に言ったのです。
そこで母親が私に言った返事はかなり衝撃的なものでした。
なんと母親はあの当時にそのような体験をしたこと自体はなかったようなのですが、あの寝室にしていた部屋と、別の部屋からも嫌な気配をずっと感じていたらしいのです。
それを聞いた時に私自身も、別の部屋からも嫌な気配をよく感じていたし怖くてあまり行くことがなかった部屋だったことを思い出したのです。
何があったのかなんてわかりませんが、もしかすると父や母、そして私の3人が霊感が全くなかったから気付かなかっただけであって、あの賃貸アパートの部屋には何かが住み着いていたのかもしれません。
今では家も引っ越しましたし、昔住んでいた賃貸アパートには2度と入ることはありません。今となっては良い思い出と言えるくらいに薄まっているのでホッとしております。
今後もそのような体験が起こらないことを勝手ながらに願うのみです。
みなさんも気をつけてくださいね。
この記事へのコメントはありません。