怖い話

あれはいったい・・・

数年前に、当時付き合っていた人と一緒に青森県に観光に行ったときに、かなり恐ろしい恐怖体験をしました。

わたしたちが観光しようと考えていたスポットの1つに、恐山が候補の1つにありました。
恐山にいくのは、お互い初めてなことで、なぜ行こうと思ったのかというと、恐山はイタコがいる、なんとなく怖い雰囲気とオーラ、心霊現象、そんなイメージが強いですが、入ってみると景色がとても綺麗で、壮大であり幻想的だという噂話を事前に聞いていたので、一度どうしても行ってみてみたかったんです。

その恐山に行く前の日から、なんとわたしだけ怖い体験をしてしまったのです。

恐山に向かう前日に宿泊した宿で、夜お風呂に入って布団で寝ていました。
すぐ眠りにおちて、数時間たったころのことです。

明け方ころに、私の耳元で、女性の「ぎゃー!」という叫び声が聞こえたんです。
その声は、かなり切羽詰まった悲痛な叫び声だったんです。

さすがに何かが旅館で起きてしまったのかと、わたしはびっくりしてとっさに起きて、隣ですやすやと寝ている彼を、必死に起こしました。
彼に、今わたしが聞いてしまった女性の叫び声のことを話しましたが、彼は全くそんな声は聞いてない、気のせいじゃない?とのことでした。

そうなんです。
私は旅先などで、たまにこういう霊現象に遭遇してしまうことがある体質なんです。小さいことからずっとそうでした。
だから、そんなこともあって、またそういう現象がわたしにだけ起こってしまったんだろうな、と、その時は、自分の中でそう言い聞かせて、そんなことはなかったことにしようとしていました。

しかし、その時です。
旅館の部屋の窓を、どこも全く開けていない状態で、風も通っていないはずの部屋なのに、浴衣が入れてある両扉開きのタンスの扉が、開いたり、閉じたり、開いたり、閉じたり、、をゆっくりゆっくりと繰り返して動いていたんです。

さすがに、それを彼もわたしと一緒に見ておりまして、お互い呆然として、ただただ目の前の恐怖におののいしまっていました。
閉じたり開いたり、の現象は、その後大体約3分ほど続いて、ゆっくりと動きが静まって、終わりました。

これは、やっぱりわたしが何かを引き寄せてしまったのか?と、思ってしまった私は、今日、恐山に行くことになっていたのを思い出して、身震いがしました。

そうすると、そんな私を気遣ってか、彼が旅館のスタッフさんに、聞いてくれたんです。
「これから私たちは、恐山へ観光に行くけれど、今朝こういう現象が部屋で起こりました。こういったことが起こってしまった後の場合でも、そういう場所に行っても果たして大丈夫なんでしょうか?」
旅館のスタッフさんは、「ああ、なるほど、そのような現象が起きたんですねー。そういうことに敏感な人は、もういかない方が無難でしょうね。」と、それだけの返答でした。

でも観光として、はるばる青森まできたので、さんざん2人で悩みましたが、やっぱり行こうか、ということになり、元気を出しながら2人で車で恐山へ向かうこととしました。

さっきまでのことは忘れて、ひたすらドライブを2人で楽しんでいたのです。しかしそこから、またわたしにだけ恐怖体験が起きてしまったんです。
車がどんどん走るにつれて、「恐山まであと○キロ」、という道路標識や看板がどんどん現れて距離がちかづくにしたがって、わたしに異変が起きてきたんです。

助手席に座っていた私の全身に、弱い電流のようなものが流れ始めたんです。
そのときは彼に、「やばい、またなにかわたしに起きてきた。今度は体がしびれてきて、体にあまり力が入らない、どうしよう。」と伝えました。
彼もやっぱりそんなわたしにびっくりして、車どこかにとめて、ちょっと休もうか?と声をかけてくれたのですが、「いや、大丈夫。気のせいかもしれないし。」とだけ伝えてそのまま走行してもらうことにしたんです。

またさらに、徐々に恐山が近づくにつれて、わたしの全身に走っている電流のようなものがどんどん強くなってきたんです。
そのころにはもう、遠く目の前には、恐山が見え始めていました。
なにかにおびき出されてる?まさにそんな感覚でした。
それとも、電流のようなものをわたしがキャッチしてしまっている?なにものかの意識が、わたしの中に入ってきているのか、山に呼ばれているのか?!いろいろな妄想が頭の中をひたすらよぎってザワザワしてしまっていました。

恐怖もありましたが、新しい心霊体験に、自分はこのままどうなってしまうんだろうという興味すら感じてきたんです。
さらに、体に電流のようなものがずっと流れて続けていたので、助手席で、わたしは徐々にあまり動きがとれなくなってきていました。
ひたすら静かに動かずに座っているだけの状態になってしまっていました。

彼のほうも、隣で運転しながら、わたしのことをとても心配していましたが、そんなことが1時間ほど続いた後、なんとか恐山へ到着することができました。
恐山に到着して、恐山の駐車場に駐車を終えたとたん、なんと不思議なことに、ずっとわたしの中に流れつづけていた電流のようなものが、その時一気にとれて、わたしは開放されたんです。
ようやく身動きもとれるようになって、またその不思議な現象にただただ恐怖でしたが、解けたことによる安心感も大きかったんです。

やっぱり、山が、わたしを呼んでたんでしょうか。
呼ばれてない者が山に入ったら、きっと電流のような現象は、もっと強くなって拒んだんだと思います。
そうならなかったということは、わたしはきっと、山に受け入れてもらえたんでしょう。ようやく周囲に目がいくようになって、恐山の入り口で、壮大な景色をみることができました。

目の前には、なんとも不思議な空気につつまれた、素敵で独特な異空間のような景色がひたすらただただ広がっていました。
わたしたちの他に来ていた観光客は約1名くらいでした。
その方は、不思議な格好をした中年男性でした。
なんというか、小説家かアーティストのような派手な格好をしている人でした。なんというか、恐山は、圧倒的な霊山の雰囲気と空気が漂っていて、この世の始まりと、終わりをそのまま物語っているような、そんな異空間でした。
でも、なぜか懐かしくなるような、そんな良い気持ちにさせてくれる空間でした。

わたしたちが来たこの日は、イタコさんはいませんでしたが、山を登って三途の川のような川にきたときに、「こんな景色、他でみたこともないし、これからもずっと見ることもここに来ない限りはないだろう」そんな懐かしいけど悲しいような、人の魂の行方って、こんなイメージなのかな、とそう感動をさせられました。
入山してからは、わたしの体には何も反応はなく、心霊現象もなく、ただ普通に楽しむことができていました。
綺麗な景色を目の前にしながら、今回は不思議な恐怖体験はたくさんしたけれども、きっとここに来てよかったんだと思いました。

一通り山を見終わって、もう帰ろうか、ということになりました。
駐車場に戻って車を走らせました。またなにかわたしに起こるのかな?ちょっとびくびくして身構えていましたが、なんと帰り道は、何事もなく無事に帰路につくことができたんです。

恐山にいくまでに何回かの恐怖体験をしましたが、あの現象たちは一体、なんだったのでしょうか。いまとなっても、いまだにわかりません。

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